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購入した別荘地に大きな木が生えていたら、「伐採して広々と土地を使いたい」と思う方もいるのではないでしょうか。
でも、少し待ってください。もしかしたらその土地は、風致地区や国立公園の中にあるかもしれません。その場合、届出をして許可をもらわないと木を切ることができない可能性があります。

樹木の伐採を考えるなら、まずは建築士などの専門家に相談することをおすすめします。
また、どの木をどのように切るかは、土地の状況を確認しなければ決められないため、最終的には現場での判断となります。

では、木を切る作業は誰がやるのでしょうか?

  1. 造園業者
  2. 建設会社
  3. とび職などの基礎工事を請け負う職人

答えは、後ほどご説明します。

山の中の別荘地で、杉の木の伐採に立ち会いました

今回は、山の中の別荘地で、私(米村)が実際に見てきたお話です。
建築主によって伐採計画にリストアップされたのは、樹齢40年から50年程の高さ20m相当の杉が4本。
現地での判断により、2本は枝打ちをして、2本は伐採することになりました。

先に伐採してから切り刻むのかと思い現地に行ったのですが、そんな安易なものではありませんでした。職人さんが枝を落としながらどんどん登っていく姿に絶句!杉の木がゆらゆらとしなっています。

登れる限界の最高部で、上部の幹に縄を掛けて、チェーンソーで切った幹や枝を地上まで誘導するという作業を繰り返します。
何時間もかけて、木が10mくらいまで短くなった段階で、やっと職人さんは地上での作業になり、チェーンソーで一気に根本から切り倒すという見たことのあるシーンに。
杉の木は、ロープで方向を誘導されて横倒しになりました。

ハラハラドキドキ、そして感動のお仕事を拝見した1日でした。
なお、この作業の前には、伐採する木に塩とお酒をお供えしてお祈りをしています。

切った後の木はどうなるの?

これもケースバイケースです。
スペースに余裕があれば、放置して自然に分解されていくのを待つこともできますが、そうはいかない場合もあります。
注意しなければいけないのは、「ごみ」として自治体に処分してもらう場合は「50cm以下に切断する」などの決まりがあることです。
太い木を輪切りにするのは大変な作業です。また、処分してもらうための場所まで運ぶのも重労働です。自分でやればいいと気軽に考えていると、後で困ることになります。
切り倒す前に、木をどのように使うのか考えておくべきでしょう。細かく切ったり運んだりする場合はプロにお任せする方が安心です。

今回は、処分される部分(主に枝)は細かく切られて、別荘が完成したら設置される薪ストーブの薪となる予定です。また、一部は建築主のリクエストで、約40センチ間隔で切断し、庭に置く椅子にします。
木を伐採して終わりではなく、どうやって有効活用するかを考えるのも、建築主にとっては楽しみの一つになるのではないでしょうか。

木を切ってしまうのは、よくないこと?

樹木を伐採することにためらいを感じる方もいるかもしれません。でも、ちゃんと意味があります。
「間伐材」についてご存じでしょうか。間伐材といえば、杉の木が有名です。

戦後、復興や経済発展のため、日本各地の山に杉の木が大量に植えられました。
杉の木を実際に建材として使うためには、最低でも40年間は山で育てなくてはいけません。その間、杉の木は、より多くの太陽光を求めて枝を張り、上へ上へと成長する競争が始まります。植樹の時には高密度で苗木を植えているので、きちんと間伐をしなければ日照不足になります。そうなると、建材として使える木が育たないのです。

また、杉は、台風などで強い風が吹くと大量の枝葉が建物や道路に落ちてしまいます。別荘地の環境整備という意味でも、間伐は大切です。

今回の別荘地も、最初は木が生い茂り、地面から見上げても空が見えないくらいでした。伐採後は日光が差し込み、山の稜線が見えるようになりました。間伐という意味があっての伐採だったのです。

木は誰が伐採するの?いくらかかる?

冒頭の「木を切る作業は誰がやるのでしょうか?」というクイズの答えは、「全て」です。私がこれまでに見てきたのは、こちらの3パターンでした。

  1. 造園業者
  2. 建設会社
  3. とび職などの基礎工事を請け負う職人

どの業者さんにも共通するのは、度胸と判断力が人並み以上にあることでしょう。
今回お見せした動画は、1.の造園業者の職人さんによるものです。樹木と呼吸を合わせたような一体感があり、身のこなしに芸術性を感じます。

2.の施工会社による伐採だと、監督がチェーンソーを操り、仲間がロープを引っ張って予定の着地点まで誘導します。
気合いの大声、「右だ左だ、もうちょい左だ」とこだまが響きます。とてもワイルドな体を張った世界なのです。

建築士としてはなるべくコストを抑えたいところですが、職人さんが作業する現場を見ていると、金額を下げてほしいとは言えない空気感があり、見積にはいつも悩みます。
木を1本切るのにいくらかかるのかは、一概には言えないのです。
また、切り倒した木を細かく切断してもらう場合には見積金額も変わってきますので、気を付ける必要があります。

「大きな木が生えている土地に別荘を建てたい」とお考えなら、まずはご相談ください。

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湘南を拠点にする一級建築士事務所 米村和夫建築アトリエ/風のアトリエ
所長 米村和夫

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